「 コントロールから共感へ 〜母親の心理的変化〜」
今日は、私自身の経験を通して、子どもとの向き合い方、そして心理学を学ぶ中で気づいた「甘えの欲求」と「コップと根っこ」についてお話しさせていただきます。
自己紹介
初めまして。私の名前はひとみんです。家族は夫・娘 2 人そして愛犬の柴犬むさしと暮らしています。 私は現在、就労継続支援B 型事業所でサービス管理責任者として働いています。
働き始めて今年で 10 年になります。若い頃は仕事があまり長続きしない方でしたが今ではこんなに長く働けて自分でも驚いています。
私は縁結びで有名な椿大神社の近くの自然豊かな場所で生まれ育ちました。幼少期は小児喘息で体が弱く学校を休むことが多かったです。病弱だったため、学校行事に出られず周りの健康な子たちを羨ましく思うこともありました。家は自営業で両親は忙しく私が学校から帰っても家に居ないことが多くさみしい思いをしました。ですが2 つ上の兄と、その友達に混ざり、かぶと虫を採りに行ったり魚釣りをしたり、野球チームの人数合わせに入れられて、活発に育ちました。今思うと、とても懐かしく感じます。母は兄びいきで、兄弟げんかをすると「女の子なのに負けていなさい」、「女の子なのに….」と悔しい思いもしましたがその分、父が私を大切にしてくれました。
心理学に出会うまでの状況
私は晩婚で、長女を授かったときから「この子のために出来ることは何でもしてあげたい。」と1歳から公文、英会話、クラシックバレエなどいくつもの習い事に通わせていました。様々な経験をさせることで長女の可能性を広げたい、将来困らないようにしてあげたい、そんな思いがありました。しかし今振り返ると、それは「長女のため」と言いながらどこかで自分自身の満足のためであったのではないかと思います。
今振り返ると、私は長女の心を満たすことよりも、できることを増やすことに必死で、周囲と比べ遅れないように、むしろ先に進めるようにと、必死でした。気づけば私は、教育ママになっていました。
中学受験の時期が近づいたとき、私は長女に「受験したい?」と確認しました。無理に進めたくないという気持ちも、ありました。長女は「やってみたい」と答えました。その言葉に私は安心し、「ここまでやってきて良かった」と心から思いました。
そして合格。 このままうまくいく、と信じ切っていました。
長女が中学校に入り仕事も順調になり、幸せな日々を送っていました。
しかし、その後の生活は大きく一変します。コロナ禍に突入したのです。
学校生活も制限されオンライン授業になりました。人との関わりも減り、平和だった日常は一変しました。コロナが収まり学校が再開すると、長女は不登校になりました。小学生から優等生で学校を休むことのない子がどうしてそうなってしまったのだろう…頭が真っ白になりました。なぜ?どうして?その思いばかりが頭を巡りました。それまで順風満帆だと思っていた生活が音を立てて崩れていくような感覚でした。朝になると、「頭が痛い」「お腹が痛い」と訴えるようになりました。
訴える長女に対してどう声をかければいいのか分からず、「学校に行くのが当たり前」私はそう考えていたので、長女の悩みを聞くより、「行きなさい」としか言いませんでした。
「頑張りなさい」「甘えてるだけでしょ」今思えば、一番言っては行けない言葉を、私は何度も長女に投げかけていました。
毎朝言い合いになり喧嘩の続く日々でした。「私の育て方が、間違っていたのではないか」「こんなはずじゃなかった」。
学校を休ませることが甘えだと思い、励ますべきなのか、休ませるべきなのか正解が分からず、ただ時間だけが過ぎていきました。
私はその当時、パート勤務していた職場でサービス管理責任者へと昇進する話をいただきました。本来ならば喜ばしいことでした。しかしその時の私は、娘と向き合うことから逃げるように、その仕事を受けました。仕事に行けばやることがあり、必要とされる場所がありました。悩みを一時的にでも忘れることができました。気付けば私は、次第に長女と距離を置くようになり、仕事に逃げていました。長女との距離は確実に広がっていきました。同じ家に居ながら、心の距離は遠くなっていくような感覚でした。「これで良かったのか?」何度も問いかけましたが、答えは出ませんでした。
学校に行けない日々が続き、結果長女は学校を辞めてしまいました。
これから長女はどうなるのか、何をするのか頭の中は悩みや、焦りばかりで困っていました。
ととのえとの出会い
それから1年が経ち、趣味で通っていたリンパマッサージの中村先生がととのえの講演を見に来ない?と誘っていただいたことが、私が心理学を学ぶきっかけになりました。もともと心理学に興味はあったものの学ぶ機会に恵まれずにいたため、最初は習い事の一つ、という軽い気持ちで入会しました。ある時、先生に不登校の長女の話をしたところ「お母さんは立場的に話を聞くのが難しいと思うから、私が聞いてみるね」と言って長女のカウンセリングをしてくれました。先生は長女の今の気持ち、悩んでいること、学校について、日常など上手に聞き出してくれていました。普段は本心をあまり表に出さない長女が、先生の前では、私には話さないようなことを素直に話していて、その姿を見て先生はすごい方だなと思いました。私自身も心理学を学べば、長女の気持ちに少しでも寄り添うことができるのではないかと思い、学び始めました。学びを重ねるうちに、生き方や考え方が少しずつ変わっていきました。特に大きく変わったのは、長女との関わり方です。当初、不登校になったのは長女自身の問題で、「学校へ行けなかったのは長女の責任」と考えていました。しかし、心理学を学ぶうちに、本当にそれだけが原因だったのだろうか?と考えるようになりました。
心理学を学んでわかったこと
心理学を学んでわかったことは 自分の考えを押し付けず、認めてあげること
自分自身を知ることが大切だということ
甘えの欲求,コップ,根っこの考え方についてです。
◎自分の考えを押し付けず認めてあげること
それまでの私は、良い親でありたいという気持ちや、子供を大切にしすぎていて「こうあるべき」「こうした方がいい」という考えを強く持っていました。特に子育てにおいては、「親として正しいことをしなければいけない」「子どもをちゃんと導かなければいけない」という思いが強く、その基準に当てはめて関わることが当たり前になっていたように思います。長女が不登校になったときも、学校に行ってほしいという気持ちが強くあったので、行けない理由を探したり、声掛けをしたりと自分なりにできることをしていました。
ですが、今振り返ると、そのときの私は、長女の気持ちを見ているようで、実は自分の中にある「こうあるべき」という考えや、価値観をおしつけてしまっていたのだと思います。
「学校に行くのが当然」「このままではいけない」
そんな思いが強くあるほど、長女の現状を受け入れることが難しくなっていました。
当時の私は長女がどれほど苦しみ、どれほど自分を責めていたのか、何一つわかっていませんでした。長女は学校へ行けなかった自分への苛立ちを抑えきれず、自分の腕に傷をつけるほど追い詰められていたことにさえ、気づけなかったのです。家族でありながら、その痛みに寄り添うことも出来なかった......
私は、母でありながらあまりにも無力な存在でした。
心理学を学ぶ中でまず気づいたのは、私は知らないうちに自分の考えを長女に押し付けていたということでした。もちろん、良かれと思ってのことです。でも正しさを基準にして関わるほど、相手の気持ちは置き去りになってしまうことがあります。その学びから、私は娘との関わり方を少しずつ変えていきました。「どうして行けないの?」ではなく、「そう感じているんだね」と受け止める。
「頑張ってみたら?」ではなく、「今はしんどいんだね」と寄り添う。
最初は、これでいいのかと不安もありました。何も変わらないのではないか、むしろこのままでいいと思ってしまうのではないか、そんな気持ちもありました。
それでも、自分の考えを押し付けたり、アドバイスをするのではなく、ただ気持ちを受け止めることを意識していくうちに、少しずつ変化が現れました。
まず感じたのは、長女の表情の変化でした。以前よりも緊張がやわらぎ、安心しているような空気を感じるようになりました。そして、少しずつ自分の気持ちを話してくれる場面が増えていきました。それは決して大きな変化ではありません。けれど、これまで閉じていた心の扉が、ほんの少し開いたような感覚でした。
また、私自身にも変化がありました。相手を変えようとしなくなることで、どうにかしなければという焦りが、少しずつ和らいでいきました。すると、目の前の娘をそのまま見られるようになり、「今、この子はこういう状態なんだ」と受け止められるようになりました。
不思議なことに、関係の中に安心感が生まれると、言葉にしなくても伝わるものが増えていきました。無理に何かをさせなくても、自然なやりとりが戻ってきたように感じます。
◎自分自身を知ることが大切だということ
心理学を学ぶ中で、私が大切だと感じたことの一つが、「自分自身を知ること」です。私たちは何か問題が起きたとき、「どうすればいいのか」「何が正しいのか」と、つい外側に答えを求めがちです。私自身もそうでした。
ですが心理学を学ぶ中で気づいたのは、まず大切なのは外側ではなく、「自分の内側を見ること」だということでした。自分自身を知るというのは、特別なことではなくて、「今、自分は何を感じているのか」に気づくことです。たとえば、不安や焦り、イライラなどの感情です。これまでは、相手の言動にすぐ反応してしまい、気づけばイライラしていることが多くありました。
しかし、自分自身を知ることを意識するようになってから、家庭でも職場でも怒りを感じる場面が少なくなりました。今、自分はなぜ怒っているのかと立ち止まって、考えられるようになったからです。そうすることによって、その裏にある不安や焦りに気づけるようになり、感情に振り回されにくくなりました。自分の状態を理解できるようになることで、気持ちが落ち着き、人との関係も良くなっていった気がします。
心理学を通して学んだのは、「まず自分を知ることが、すべての土台になる」ということでした。外を変えようとする前に、自分の内側に目を向ける。この小さな実践が、大きな変化につながっていくと感じています。
◎甘えの欲求,コップ,根っこの考え方
まず「甘えの欲求」とは、「安心したい」「受け入れてほしい」「わかってほしい」という、人が本来持っている自然な心の欲求です。一般的に「甘え」というと、わがままや依存のように捉えられがちですが、心理的には心を安定させるために欠かせない大切なものです。
次に「コップ」の考え方です。心の中にエネルギーの入ったコップがあるとイメージします。このコップが満たされているとき、人は安心感があり、落ち着いて行動することができます。反対に、コップが空に近い状態になると、不安やイライラが強くなり、やる気が出なかったり、行動する力が弱くなったりします。
このコップを満たすものが、「甘えの欲求が受け止められること」です。たとえば、話を聞いてもらう、気持ちをわかってもらう、否定されずに受け入れられるといった関わりが、少しずつ心のコップを満たしていきます。
そして「根っこ」の考え方です。人の行動は木にたとえることができ、目に見える行動は「葉や枝」、目に見えない心の土台が「根っこ」です。この根っこがしっかりしていると、安心感や自己肯定感が育ち、自然と外に向かう力が出てきます。一方で、根っこが弱っている状態では、不安が強くなり、行動するエネルギーが出にくくなります。
ここで大切なのは順番です。私もそうでしたが、多くの場合「学校に行かせる」「やる気を出させる」といった行動を変えようとしますが、それは枝や葉に働きかけている状態です。しかし、根っこが弱っていると、無理に動かそうとしてもうまくいきません。本当に必要なのは、まず甘えの欲求を受け止め、コップを満たし、根っこを育てることです。安心感が満たされることで、子どもは少しずつエネルギーを取り戻し、自分の力で動き出せるようになります。つまり、変えようとするのではなく、満たすことから始める。この視点が、関わり方を大きく変える大切なポイントだと、ととのえで学びました。
いま私が大切にしていること
・自己受容(自分を認める)
・1家族、1カウンセラーという考え方
・職場での活用
・どんな出来事も捉え方次第で意味を持たせることができるということ
◎自己受容
自己受容というのは、「ありのままの自分を認めること」です。といっても、「全部を好きになる」とか「完璧な自分になる」ということではありません。うまくいっている自分だけでなく、うまくできない自分や、弱さを感じている自分も含めて、「それも自分なんだな」と受け止めることです。
私たちは日常の中で、「もっと頑張らなければ」「こんな自分ではダメだ」と、自分に厳しくなってしまうことがあります。私自身も、うまくいかないことがあると、自分を責めたり、できていない部分ばかりに目を向けてしまっていました。
ですが、心理学を学ぶ中で気づいたのは、自分を否定すればするほど、心に余裕がなくなり、さらに苦しくなってしまうということでした。逆に、「今の自分はこうなんだな」と認めることができると、不思議と気持ちが落ち着き、次の行動に進みやすくなると学びました。
自己受容ができるようになると、自分に対してやさしくなれるだけでなく、相手に対してもやさしく関われるようになると思います。
◎先生が考える1家族、1カウンセラー
私が、心理学を学ぶ中で大切にしている考え方の一つが、1 家族、1 カウンセラーというものです。これは、一つの家庭の中に、安心して話を聴いてくれる存在が、一人いることを表しています。
ここでいうカウンセラーとは、特別な資格や技術を持った人ではなく、親やパートナーなど、日常を共にする身近な存在のことです。人は誰でも、わかってほしい、受け止めてほしいという気持ちを持っています。その気持ちが満たされることで、心が落ち着き、自分らしくいられるようになります。
心理学を学ぶ中で、問題を解決すること以上に、安心して話せる関係が人の心にとって大切だということを知りました。それからは、アドバイスや正しさを伝える前に、まずは相手の気持ちを聴き、「そう感じているんだね」と受け止めることを意識するようになりました。すると、関係の中に少しずつ安心感が生まれ、無理に何かを変えようとしなくても、自然とやりとりが、やわらいでいくのを感じました。
「1 家族、1 カウンセラー」というのは、家庭の中に安心の土台をつくる考え方だと思っています。特別なことをするのではなく、日々の関わりの中で「聴くこと」「認めること」を大切にしていく。その積み重ねが、家族一人ひとりの心を支える力になっていくと思っています。これからもこの考え方を大切にしながら、身近な人との関わりを丁寧に築いていきたいです。
◎職場での活用
私は、就労継続支援 B型事業所でサービス管理責任者として働いています。 日々、利用者さん一人ひとりと向き合う中で、 心理学を学んでよかったと心から感じる瞬間がたくさんあります。たとえば、以前は「どうすれば利用者さんにお願いがが伝わるか」という“方法”ばかりを考えていました。 ですが今は、「この方はどんな気持ちで、どう受け止めているのだろう」と、 相手の心の背景を意識するようになりました。その意識の変化によって、 相手のペースに合わせて関わることができるようになり、 利用者さんの表情が少しずつ柔らかくなっていくのを感じます。 心理学を学ぶ前は、「人間関係は我慢するしかない」と思っていました。 ですが今は、「人を変えることはできないけれど、自分の見方は変えられる」 そう気づけたことで、心の持ち方がずいぶんと変わりました。



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