心理カウンセラー認定試験(第3期) 受講者の発表4

人のために自分が我慢すればうまくいくと思っていた私が、うまくいかなくなり、更には夫や同居の義祖母との関係まで悪くなってしまっていたのが、心理学を学んだことで他人軸が自分軸になった話をします。

 

私は心理学には学生の頃から興味がありました。しかしなかなか触れることなく、心理学を学ぶということをあきらめていましたが、実践心理学の講座を紹介してもらい、そこで人とのコミュニケーション、人の心理というものを学び、家族とのコミュニケーションも良くなりたい、もっと心理学について学んでいきたいと思い心理カウンセラー養成講座も受講することにしました。

 

結婚、そして義祖母との同居

私は祖母、父、母、姉、そして私の5人家族の中で育ちました。

母は世話好きで、なんでもやってあげる性格です。父も家事は一切やってこず、母に任せきりにしていました。私はその姿を幼いころから見ていてお母さんとは、何でもしてあげる人なんだと思いその姿を理想としていました。

 

そして結婚し、今まで見てきた家族像を理想とし現実にしなきゃいけないと思い込み頑張っていました。

食事を作るのは私、家の掃除をするのも私、朝は夫より早く起き、自分の朝ご飯を済ませ起きてきた夫にパンを焼いて座って待っている夫に出してあげていました。夫の母もまた私の母と同じように、なんでもやってあげる人だったので夫もそれが当たり前で、心地よかったのだと思います。誰も違和感を覚えず、私だけがなんとなくモヤモヤを抱え、毎日過ごしていました。

 

そんな生活を2人でし、5年前にその生活に夫の祖母が加わり今私は、夫、2歳になる息子、夫の祖母と暮らしています。

結婚して10年、祖母と暮らして5年、この5年間は私にとっては今までの人生で一番苦労したと思える日々でした。

 

なぜ義祖母と暮らすようになったかその経緯をお話しすると、義祖母は早くに義祖父に先立たれ、20年以上ひとりで暮らしてきました。義祖母はずっとひとりで暮らしてきましたが、もう高齢で、今年90歳になり、そろそろ誰かが面倒を見なきゃという話が出ましたが、義祖母の息子も愛知県に住んでいるので近くにいないし、義祖母の娘、つまり私の義母も高齢の義母がひとりで住んでいるのでいずれは家に入れなきゃいけないから一緒に住めないし、義祖母が今住んでいる土地がもったいないと言い、私たちに白羽の矢があたり、一緒に住んでくれないかとなりました。

 

その時の私の気持ちは、私の母も私の祖母と暮らしていたし、もう高齢でそんなに長くは一緒に住まないだろう、私の実家も遠くはないし、私が何でもしてあげれば大丈夫、と思い一緒に住むことに決めました。それが後に心理学でイネイブラーだというものだとわかりましたが、その時はわからず軽い気持ちで承諾しました。

 

ですが、やっぱり他人と暮らすのは難しく、段々と祖母と暮らしていくことがストレスになっていきました。

例えば、義祖母が使った食器の汚れが付いたまま片付けてあったり、トイレが汚れていたり、義祖母が何かやりだすとあぁまたやっている、そんなことしなくてもいいのに、と高齢の女性なら食器が汚れていることも、トイレが汚れていることもきっとあるあるだとは思うのですが、当時の私には到底受け入れることができず、義祖母の行動が日に日に目に付くようになりました。

そしてもうひとつ、ストレスの原因がありました。それは、夫の家族からの義祖母をちゃんと見ていろという無言のプレッシャーです。もともと腰が痛い義祖母が何かしてまた腰が痛くなったりしたら、一緒に住んでいながら目が行き届かなかった私が責められるような気がして、部屋も物が散らからないように片付けなきゃいけないとかいろいろなことを考え先回りして動いたり、常に気を張っていました。自分の家なのに、義祖母がいると思うと落ち着くことができませんでした。

 

私には私のやり方があっても、実の祖母ではないので言いたいことがなかなか言えないでいました。

そして息子が産まれ、今までの環境からガラッと変わったことでさらにストレスが増しました。

子供の世話、祖母の食事の用意、子供のタイミングを見て家事などをし、体も心もいっぱいいっぱいでした。

昼間に子供を寝かしつけ、やっと子供が寝てくれたと思ったら掃除機をかけたり、子供が泣きだしうるさいと義祖母に迷惑がかかると思い泣き止むまで必死にあやしたり、なんでこんなに自分の家なのに色々気にしながら生活していかなきゃいけないのだろう、と毎日思っていました。

 

義母に相談しても「義祖母は何でも一人でできるから気にしなくてもいい」と言ってくれますが、もし何かしてケガでもしたら、、、もし施設に入ることができなかったら祖母の介護は誰がするのだろうか、、、と思い、私が動けばいいと我慢していました。

一緒に住んでいるのだから仕方ない、私が我慢をすればいいだけ、旦那に言ってもわかってもらえないと思っていました。

そしてそんな生活を続けていくうちに自分の中で家族に対する気持ちも自分の気持ちもわからなくなっていました。

 

自分の性格も昔と思うと義祖母と暮らし始めてから変わってしまったと思います。

昔はよくしゃべり、笑い、明るい性格でした。

しかしいつも義祖母がいると思うと素の自分を押し込んでしまうようになり、以前より笑うことが少なくなってしまっていました。

最初に一緒には住めない、と言えばよかった。

私が何でもしてあげればいいと思っての同居でしたが、義祖母なんていなくなればいい、、、そう思ってしまうこともあり、段々と私の中の感情が怒りになっていました。

そして自分の中でいろいろな気持ちを整理することができなくなり、なみさんに助けてもらいました。

 

「家族療法」と「認知行動療法」

なみさんにはじめてカウンセリングをしていただき、今まで人に話すことができませんでしたが、今までため込んでいた義祖母との話、夫との話を聞いてもらいました。

後で知ったのですが、そこでなみさんが使ってくれていた手法が「家族療法」と「認知行動療法」だったのです。

 

家族療法

一つ目は、「家族療法」です。

家族療法ではだれも悪者にしないというところが特徴です。

なみさんは義祖母を否定するわけでもなく、夫を否定するわけでもなく私の話に共感してくれました。

今まで夫に義祖母の話をすると「気にしんどけばいい」と共感してくれず、私の話を聞こうともしませんでした。なみさんが私の話に他人と住むのは難しいこと、と共感してくれただけで、今まで溜まっていたものがあふれ出てきました。

家族の中でもお母さんは背負いすぎてしまう、私もそんなお母さんのようになっていました。良かれと思って、私を必要としてほしい、私には価値がある、そういったイネイブラーをしていました。

 

イネイブラーとは簡単に言うと「世話焼き人」

良かれと思って行ったことが結果的に害にしてしまうことです。このイネイブラーという言葉は私にとって衝撃でした。そして私はいつの間にかこのイネイブラーをしていたのです。

 

夫は仕事から帰ってきて疲れているからと自分は子供の世話で疲れていてもご飯の用意をし、大人だから自分のことは自分でできるはずなのに、私がやらないとと思いながらやっていました。

家事、子育て、祖母の事、私がひとりでやればいい、我慢すれば何も問題は起きない、と思い問題から逃げていたのです。

我慢をするとどうなると思いますか?心理学で学んだのは、我慢を重ねるとストレスがかかります。それが怒りになり、さらに我慢を重ねると、もういい!という気持ちになり、そして長い年月をかけて恨み、憎しみ、最悪は復讐心へと発展していきます。

私も自分の中でこのように気持ちの変化をしているのに心理学を学んでから気づきました。

 

認知行動療法

二つ目は、「認知行動療法」です。

認知行動療法とは、事実に対する認識自体を論理的に修正する方法です。

認知行動療法を簡単に説明すると、うわー!もうダメだ!と思い込んでいる事実を実はそれって思い込みなんだよ!って事に気づいて、起きている事実を前向きに考えられるようにする事です。

私の気持ちがいっぱいいっぱいの時、まさにこの状態でした。もうダメだ(義祖母が死ぬしか私が楽になれる方法はない)と思い込み、私は我慢すればいい、と思い込みと決めつけをしていました。

そして、この認知行動療法を使い執着している配分を変え、問題を解決するよう誘導していきました。

私には義祖母に対する執着が多く、義祖母の行動が目に付いてしまったりして、あぁまたやっている、余計なことをしなくてもいいのにと思って不快な感情が溜まって苦しくなっていました。

 

認知行動療法で気づいたのは、私、夫、義祖母が問題ではなく、夫に私の気持ちをわかってもらえる方法がわからないことが問題でした。

今まで義祖母にばかり向いていた執着を夫にも向くようにし、執着の配分を分けていきました。要するに私は夫と向き合ったのです。

夫は何もしないし何も言わないので私は夫の方を見ず、夫は何をしても変わらないからと諦め、見て見ぬふりをし、義祖母ばかりに目を向けていました。

 

カウンセリングで夫の話をし、そこから夫への気持ちも向くようになりました。

夫は気が短く、怒っているのがすぐ顔に出るタイプです。

私はいつも余計な一言を言ってしまい、夫が怒ってそこから少し機嫌が悪くなります。そうなることが嫌で、あとで面倒だから私がやればいいと思いながらやっていました。

それが問題でした。問題を問題として見ていませんでした。

 

なみさんからは向き合う方法として、「褒め褒め作戦」「アメとアメなし」というのを教えてもらいました。

褒め褒め作戦は、名前の通り、「褒める」です。

 

今まで夫には「ありがとう」「助かる」などの言葉がなかなか言えていませんでした。

洗濯物を畳んでほしいとき、今までだったら「洗濯畳んで」と一方的に言っていた言い方を、「今手が離せないから洗濯物畳んでくれると助かるな~」と言い換えてみたら、今までのイヤイヤそうにやっていた態度も、「わかった~」と嫌な顔をすることなく洗濯物を畳んでくれました。そのやり取りを何回か続けたある日、夫が自分から洗濯物を畳みだしました。

 

私はびっくりしました。今まで夫の目の前で畳んでいても一切手伝おうとしなかったのに私が言わなくても進んで動いてくれたことに感動しました。

たかが洗濯物で、と思うかもしれませんが、私にとってはとても大きなことでした。

 

なみさんに教えてもらったもう一つ、「アメとアメなし」

これはよく言う「アメとムチ」という言葉の「ムチ」を「アメなし」に変えたもので、「アメなし」とは何もしない。褒めるだけ。

それだけ?と思うかもしれませんが、これもまた効果があるのです。

分かりやすく言うと、指導者が物事を教える時によく「アメとムチ」と言いますが、ムチとは「叱ること」。それをできたときは褒め、できないときは叱るのではなく褒めないことです。

これを私もやってみて、やってくれたあとに「またおねがい」を言わず、「ありがとう」「助かったよ」と言うだけで夫の顔が変わりました。

 

それからあってもないものとして見ようとしていなかった夫への執着も、徐々に夫の方へも向くようになり、少しずつ執着の配分が義祖母にだけあったものから義祖母と夫とで半分になるようになってきたのが自分でもわかりました。

義祖母の顔を見るのも嫌になっていましたが、カウンセリング後、少し義祖母の顔を見て話すことができました。

カウンセリングしてもらったことを夫に話し、夫は私には申し訳ないことをしたと思っていると話してくれました。

 

夫も私が実家で祖母と暮らしていたから一緒に住んでもうまくやれると思っていたし、一度家を建て替える話が保留になったとき、その時にやめておけばよかったと思っていると言いました。

私はそれが聞けただけで心が軽くなったように思いました。

今まで夫と向き合って話をしたことがなかったので、やっと私の気持ちを素直に話すことができ、夫が思っていたことも聞くことができました。

そして話をしたことで夫は少しずつですが、変わってくれようとしています。

夫が私の気持ちをわかってくれるようになったので自然に執着の配分が変わりました。

 

カウンセリングで整理することができたことは、

・義祖母との暮らしを誰もねぎらってくれなかったこと

家族だから当たり前、とみんなが思ってしまっていたことで私が我慢すればいいと思い我慢しすぎて義祖母の顔も見たくないと思ってしまっていたが、話を聞いてもらったことにより気持ちも楽になり、私が我慢をする必要はないということに気づく事ができました。

 

・手のかからない子供と言われていたけど実際には手がかかっていたこと

義母に子供のことでいっぱい寝るし、手のかからない子と言われ、自分の中で納得いかずにモヤモヤしていたが、一般的な1歳児よりは手がかからないというだけで、1歳10カ月の子どもがひとりで靴を履いたり、ご飯を食べたりできるわけがなく、実際には目を離すこともできず当たり前に手がかかっているということでした。

 

・夫は何もしてくれないと思っていたこと

夫に私の気持ちを話してもわかってもらえない、と思って今まで夫に向き合って話をしてこなかったが、なみさんがきっかけをくれたことで話をすることができ、夫も変わろうとしてくれるようになりました。

このことが自分の中で整理することができました。

 

 

性格診断で自分の心の中を見える化

私は比較的早く変われることができましたが、それには理由があります。それは、性格診断で自分の心の中が見える化できていたことです。

 

私が実践心理学を学び始めた最初の性格診断は一番高いものがFC、一番低いものがAでした。そして義祖母との同居でとてもストレスがかかっていたときの状態が一番高いものはAC、一番低いものはFCに変わっていました。

 

以前の私はFCが高い人の特徴の天真爛漫、活発、感情的、深く考えないなどがあり、全くこの通りでした。そして一番辛かった時のACのグラフの特徴は、協調性に富む、妥協性が強い、従順、慎重、遠慮がち、我慢してしまうなどがあります。今の私はまさにこのACのようになっています。

 

数年でこんなに変わったことに驚きました。

目に見えてわかるからこそ何に取り組んだらよいのかわかるのが心理学の良いところです。

先に述べたように、自分の性格が変わっていることには気づいていましたが、こんなにも変わっているなんて思いませんでした。

心理学を勉強していなかったらこの変化にも気づく事ができず、ずっとひとりで溜め込んで自分が我慢すればいいと思っていたと思います。

 

一人で背負いこんでいるお母さんたちへ

最後に私のようなイネイブラーはたくさんのお母さんがしていると思います。家族を助けようと思ってしたことが家族をダメにしていることがあります。そしてひとりで背負いすぎてしまいお母さんがストレスを溜めてしまいます。イネイブラーをしているとは思わず、お母さんとはこうでないといけないという思いからしてしまっている人が多いと思います。

 

私はそんなお母さんたちに心理学を学び、楽しい子育てができるようになって欲しいと思っています。

これから心理学を勉強しようか迷っている人は、きっとあなたも私のように夫との関係も、周りの環境も変えていくことができると思います。

 

私が心理学を学んでいなかったら、なんで私が義祖母と一緒に暮らさなければいけないの、なんで夫は何もしてくれないの、と思い誰にも言えず、もっと背負って段々と気持ちも怒りへと変わり、そして夫に当たり、夫との関係もうまくいかず、義祖母とも接したくなく距離を置き、子どもにも義祖母と関わらないようにし、と嫌な私の無限ループでグルグルしていたと思います。

 

こういう話はママ友や家族には話しづらく、人に話すことができないと思います。カウンセラーなら話を聞いてくれ、そして解決法を教えてくれます。

前はしてやった感が強かったですが、心理学を学んだことで心が軽くなり、楽に考えられるようになりました。自分一人で背負わなくなり、今まで自分のことは後回しだったのを自分を軸に考えられるようにもなりました。

 

自分の中のチャイルドを否定しなくてもいい

心理学の中で「自分の中のチャイルドを否定しなくてもいい」という言葉があります。

私はみなさんにこの言葉を知ってほしいと思います。

 

チャイルドとは、欲求のことです。~したい、やりたい、食べたい、思い通りにしたい、これイヤ、やりたくない、あいつが○○になればいいのに、、、など、自分が思っている欲求のことがチャイルドです。このチャイルドを無理に否定し、こうしなきゃいけないと思う必要はないのです。自分のチャイルドを受け入れ、うまく付き合っていく方法をぜひ心理学で学んで欲しいと思います。

 

実は先日義祖母が亡くなり葬儀が執り行われました。以前の私だったらあんなことを思ってしまってごめんねと後悔の気持ちがいっぱいだったと思いますが、この発表を準備していくうちに心が整理され、ありがとうと心から送ることができました。今は同居してよかったと思います。